グローカルコラム 68

人民元の誤解

本年最初のコラムは人民元について考えてみたいと思います。

「人民元の切り上げ」が世界的な関心事となっています。中国の通貨である人民元は実質的に米ドルに固定されておりますが、成長を続ける中国経済の実態から考えて「人民元は安すぎる」という声が高まっており、いずれ「人民元の切り上げ」おこなわれるであろう、という議論です。

つまり人民元は安く固定されているので、切り上げられて高くなる、というのが大方の予想であります。すると、「いずれ高くなる元をもっていれば大儲けできるはずだ」という期待が投資家としては抱けるわけです。

過去には、円も1ドル360円で固定されていた時代がありました。今では100円強ですから、3倍以上に円の価値は上がったことになります。それと同じようなことが元でおきても何ら不思議はありませんし、世界の経済に多大な影響を及ぼす立場にある人民元が、そう長く為替を固定し続けることは困難でしょう。いずれは元も国際通貨の仲間入りをし「変動相場制」に移行せざるを得ないと思われます。中国当局も「外圧によって切り上げをすることはない」と言っていますから、もうすでに「やる・やらない」の次元の問題ではなく「いつやるか?」という問題なわけです。外圧が一段落すればタイミングを見計らって何らかの措置を講じてくるのは間違いないでしょう。ですので「元をもっていれば大儲けできる」というのは(いつ儲けられるかは別として)現実味のある話に間違いありません。

ただし、事はそう単純ではありません。多くの人が誤解していることがあります。まず、「人民元は米ドルに固定されている」ということです。決して「すべての外貨に対して切り上げられる」わけではないのです。すなわち、米ドルから元を購入しておけば、切り上げられた際に為替差益が得られますが、円から元を購入しても、円に対して切り上げられる保証はないのです。確かに、今のような円高水準で元を購入できれば、米ドルとリンクしている元は相対的に安値ですから、差益を得られる可能性は高いですが、元とともに円も高くなっている可能性だって否定できません。

二つ目の誤解は、「切り上げ」ばかりがクローズアップされますが、固定されている変動幅を増やしつつ「変動相場制」に移行されるのであり、必ずしも元高になるとは限りません。場合によっては元安となり実質的に切り下げられる可能性だってあるのです。確かに、今の中国の成長ぶりを見れば「切り上げ」の可能性の方が高いと思われますが、自由市場では必ずしも経済力により貨幣価値が決定されるものではありません。市場参加者の気まぐれにより大きな変動が起こるからです。むしろ「実態経済のファンダメンタルズ」あるいは「購買力平価」「金融平価」などの経済原理では説明不可能な市場参加者の集団心理こそが為替を決定する、と主張する人もおります。実際のところ、市場参加者(為替トレーダー)が世界中で1日に交換する額が、先進国のGDPの総和よりも大きくなっているなかでは、彼らの集団心理が相場に大きな影響を及ぼしていることだけは間違いないでしょう。

すると、中国経済の失速が表面化したり、かつての「天安門事件」のようなことが起こったりすると、経済実態とは関係なく、元が大幅に下がる局面は十分に考えられます。あるいは、自由化に合わせて、1997年のアジアの通貨危機のときのように人民元がヘッジファンドのターゲットにされないともかぎりません。

それでも、以上のようなリスクを十分にふまえたうえで余裕資金の一部を人民元にまわすことは非常に合理的な判断であろうとは思われます。紆余曲折はあっても、人民元が現在の水準のまま何年(何十年)も過ぎることは考えにくいからです。つまり長期的に見て、元は魅力的な投資対象であり得るというのが私の結論です。

けれど「人民元の将来は有望そうだ」と言って、いざ人民元を買おうとしても、残念ながらその手段がありません。自由化されていない通貨ですから、自由に元を買うことができないわけです(入手困難だからこそ魅力なのかもしれませんが)。

中国系の銀行などでは、元を買えますが、数量の制限と割高な手数料を覚悟しなければなりません。不正に両替をおこなっている業者や個人もおりますが、手数料もさることながら、これではリスクが高すぎます。

面白いのは、香港へ行くと人民元は、すでに自由に売買できる国際通貨になっていることです。中国大陸からの観光客が多いことも関係しているのでしょうが、町のいたるところに両替所があり、無制限かつ秘匿に元の購入ができます。

このように買おうと思えば、買えないこともないのですが、問題は、香港で買おうが日本で買おうが、キャッシュを保持しなければいけないということです。元には高額紙幣(100元札が最高額)がありませんので、タンス預金ではかさばってしょうがありません。

中国に力を入れている証券会社で、人民元建ての「中国A株」を対象としたファンドなどを購入すれば、間接的には元を保持したことにはなりますが、何ともまどろっこしい感じは否めません。

一番いいのは、元として銀行に預けることですが、中国の銀行は外国人に対して海外口座としてのサービスをおこなっていません、仮に、やっていたとしても不良債権でがんじがらめの中国の銀行に口座を開きたいとも思えないでしょう。

健全かつグローバルサービスの行き届いた銀行で人民元を保持する方法としては、香港の銀行を活用する以外にはない、というのが現状だと思います。香港のすべての銀行で人民元口座を扱っているわけではないのですが、何行かの銀行は取り扱い許可を持っています。前回のコラムで紹介した、当社の紹介する香港の銀行も、そのうちの一行で、人民元口座の保持が可能です。

いずれにしても、人民元のリスクはドルやユーロに比べると、かなり高いという認識はもっていただきたいと思います。(だからこそハイリターンを期待してしまうわけではありますが・・・)


(次回へつづく)

                              (2005年1月17日)



             注意

このコラムを読んで、投資行為などを始めるのは自由ですが、このコラムの内容(予想を含む)の使用・適用によって生じたいかなる事態に対しても、コラムの著者および潟Oローカルは責任を負いません。投資をはじめるのであれば、リスク管理のための専門的なアドバイスを受けられることをおすすめします。

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