グローカルコラム 72
株式と権力
西武グループの支配者であったコクドの堤前会長が逮捕され、昨夜のニュースでは各局とも堤容疑者の株式に対する異常なまでの執着心を報道していました。ライブドアとフジテレビの問題も株式の分捕り合戦ですから、「株の取得」「株の保有」ということが最近のニュースの中心テーマになっています。それはそれで良い傾向だと思っています。2年近く前に書いたコラム(コラム2「株式会社を知っていますか?」)で、株式会社に勤めるサラリーマンが株式会社の仕組みをよく分かっていないのは問題であると指摘したのですが、昨今の問題が株式会社のシステムの理解を深めるきっかけになるとすれば話題のIT企業の社長にも多少の功績を認めてあげてもよさそうです。ワイドショーでも取り上げて解説していましたし、NHKのこどもニュースでも解説していましたから、専業主婦や子供たちにも株式会社の仕組みに関する理解が深まったかもしれません。そうであるならば、喜ばしいことです。
では、なぜ人はそれほどまでに株にこだわるのでしょうか? それは自由主義経済では株が「パワー(権力)」の象徴だからです。堤容疑者が持ち株比率にこだわったのも、比率が下がると影響力が行使できない、つまり権力を保持できないからでしょう。逆に言えば、株を持っていたからこそ、絶大な権力を独り占めできたのでしょう。ライブドアがニッポン放送の株を取得するのも、メディア界での権力が欲しいからです。逆に、フジテレビは権力を奪われたくないので、激しく抵抗するわけです。政財界の反応がライブドアに対して冷ややかなのも、自分達の権力(既得権)を守るためでしょう。
結局のところ、株にこだわっているわけではなく、権力にこだわっているのです。元来、人間は権力のために争うのです。つまり「権力闘争」です。戦国時代は、武力が権力の象徴です。だから武士の身分が高かったのでしょう。近代においては、軍事力です。軍事力の大きさがその権力の大きさを表しました。民主主義国家においては、民主(民衆)が権力であらねばならないのですが、選挙権の行使によって民衆が政治家を選び、その政治家が権力を握るという歪んだ姿になってしまっています。だから政治家は土下座でも何でもして票を集めようとするのです。すべて権力のためです。公僕として民衆に仕えるべき立場の政治家と官僚が権力を握っているというところに日本という国の問題点が潜んでいます。それは民主主義などではないからです。でも、投票に行かない有権者も悪いのです。システムのうえでは、権力を行使する(投票する)ことができるのに、それをしようとしないから、結果として政治家や官僚をのさばらせていることになるからです。
政治の世界(選挙)で候補者が票を欲しがるのが権力闘争なら、自由主義経済で株を欲しがるのも権力闘争だということです。すると、社会のほとんどの現象は権力闘争として説明がついてしまいます。人間がおこなうことですからしょうがないのです。人間は誰でも、多少なりとも権力志向というのはあるのだと思います。「自分には権力志向などありません」と言い切る人であっても、うのみにはできません。「権力を握りたい」と純粋に思うだけが権力志向ということではないからです。言ってみれば、「人や金を自由にあつかいたい」と思う心が権力志向なのだと思います。例えば、親が子供に「親の言うことをききなさい」といった場合、それが正しいかどうかでなく「子供は親のいうことに随うべき」という意味であるならば、それも親の権威を利用した権力の行使に他なりません。あるいは「部下は上司のいうことに随うべき」といった考え方をお持ちなら、これも権力志向の表れでしょう。
何がいいたいかというと、程度の差こそあれ、誰でも堤容疑者やあのIT企業社長のような権力志向を有しているということです。私は、ニュースをこうした人間の側面で解釈するのが好きなのです。
「権力」や「人間の側面での解釈」ということについては、思うことがたくさんありますので、また別な機会に述べたいと思います。
(次回へつづく)
(2005年3月4日)
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