グローカルコラム 74

春、人生の門出

東京でも桜が開花し、ようやく春がやってきたという感じです。4月は人生の新しい門出となる月です。入学、入社、転勤、転職、その他新しいスタートをきる人も多いことでしょう。今回は、そういう人達へのエールの意味を込めたコラムです。

私は友人があまり多い方ではありませんが、数少ない友人の中で二人の友がこの春、新しい人生をスタートさせます。一人は、長年勤めた銀行を辞め、小学校の教師になります。大学卒業後15年間勤めた銀行をやめて、受かるかどうかも分からない教員採用試験に挑戦したのですから、大きな決断だったと思います。優秀な行員だったらしく(自称ですから本当かどうかは知りませんが)辞めるときも、強く引きとめられたそうです。銀行勤めをしているときから、教育への熱き思いを拭いきれずに決断したわけですが、銀行員という立場と約束された報酬をすてて、つまりリスクをとって、次の人生へ踏み出すわけですから、その勇気は立派だと思います。

もう一人は、今年の7月に行われる予定の東京都議会議員選挙に立候補し、政治家となります(当選すればの話ですが)。

二人とも大学時代から友人で、自宅から長距離通学をしていた私は、試験期間中は教師になる友人の(ボロ)アパートに泊めてもらい、試験勉強をするより語り合っていた時間の方が長かったことを思いだすのです。政治家となる彼とは、同じ大田区から通学していたこともあり、長い通学電車の中でよく語り合ったものです。二人とも、私が香港赴任中に訪ねてきてくれたほどの仲です。彼らとさまざまなことを語り合った学生時代を懐かしく思う反面、あれから20年近い歳月を経て、二人が新しい人生を踏み出すことには感慨深いものがあります。私自身も一大決意で独立にふみきったは2年前のことです。30代後半というのは、人生の転機がやってくる時期なのでしょうか。いずれにせよ、友人達や自分自身のことも含めて言えるのは、人生思い立ったらいくらでも方向転換できるということです。30代後半、否、40代や50代であっても、新しいことに挑戦するのに遅すぎるということはないような気がします。新社会人の皆さんへ言いたいのは、(今時こんな風に考える人はいないのかもしれませんが)、入社した会社に定年まで勤める必要もないし、途中で、いくらでもやり直しがきくということです。だからといって、今の仕事や会社がどうでもいい、ということではありません。むしろ、今の眼前の仕事をおざなりにするようでは、新しいチャンスが訪れることはあり得ません。教師になる友人も、銀行員としての実績があってこそ、民間企業出身の教員としての採用に結びついたわけです。立候補する友人にしても政治記者としての実績が立候補へつながったわけです。私にしても、今、こうして自由に仕事ができるのも、サラリーマン時代の苦闘があったればこそで、12年間のサラリーマン生活を無駄だったと思ったことは一度もありません。サラリーマンとして全力で業務にあたったからこそ、今の自分があるのだと確信しています。その意味で、新しいチャンスは、今やるべき仕事を最大限やりきった人にだけ巡ってくるものだと思えてなりません。「石の上にも3年」などともいわれますが、新社会人であれば、職場で学べることを必死で吸収し、やるべき仕事を完璧にこなし、3年後には会社の社長(大企業なら部長や課長)になるつもりで職務に取り組むべきでしょう。実際には、3年ほどで社長はもとより、役職をもらうことは稀でしょう。問題は、役職や給与ではありません。3年たてば、会社のことや部署のことも大体は理解できてくるはずです。その時に、会社(部署)の問題点を列挙し、改善策を提示できるぐらいでなければなりません。要するに、どういう責任感で仕事に取り組むか、ということです。「新人だから、言われたことをやっていれば良い」とか「どうせ、俺(私)は雇われ者だから」というような意識では駄目です。「自分の会社(部署)の全責任を負う」という気概で仕事に取り組むのです。主体性をもって「責任感」で仕事をするのです。さらには、社会(会社)には歪みや矛盾が渦巻いていますから、苦労やストレスから解放されることはありません。新社会人となる人であれば、「忍耐力」でもってこうしたこともたくましく乗り越えていってほしいと願わずにはいられません。こうした「責任感」と「忍耐力」があれば、必ずや転機が訪れると思います。

ともかくも、学生時代に友人達と色々な事を語り合いましたが、その結論はいつも、「将来、自分達が社会に貢献できる人間になっていこう」というものだったと思います。先の二人の友人に望みたいのは、学生時代の誓いを忘れずにそれぞれの立場で社会に貢献していってもらいたいということです。つまり「どうか生徒の幸福を第一義に考える教師であってほしい」「どうか都民(庶民)の幸福を第一義に考える都議会議員(政治家)であってほしい」ということです。教師と政治家の不祥事が絶えない昨今だからこそ、彼らの使命は誠に大きいと感じるわけです。私自身も分野も立場も違うなかで、いかに学生時代の誓いを果たしていくかを日々考えています。彼らに負けないよう、これからも頑張るしかありません。

                              (2005年4月1日)



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