グローカルコラム 75
家計革命のポイントと衆院選
中国に進出しようとする企業経営者に「中国人はよく働くか?」と聞かれることがあります。私の答は、「それは会社組織や報酬システムによる」というものです。社員のモチベーション(就業意欲)をうまく高めることができれば、驚くほど勤勉に働くのが中国人である、というのが長い中国ビジネス経験での実感です。その一方で、悪名高き国営企業などのシステムがいい加減な会社の従業員は、ひどいものでした。勤務時間中でも平気で寝そべっていたり、おしゃべりをしていたりと働く意欲など微塵も感じられないというケースも目の当たりにしました。「一生懸命働こうが、遊んでいようが、貰える給与は同じだから」と平然と言ってのけるのです。最近は、国営企業改革も進んでいますから、いくらかは改善されているとは思いますが、民間企業と国営企業を比べて、「これが同じ中国人労働者なのか」と随分驚いたものです。会社組織や報酬システムにより、勤勉にもなり、怠け者にもなる、中国人に限らず、人間であれば同じなのではないでしょうか。
中国での違いほど極端でないにしろ、日本でも似たような現象はみられます。「民間ではあり得ないだろう」と思われるような、いわゆる「お役所体質」を見せ付けられて不愉快な思いをすることもまだあります。今、選挙の争点として話題となっている郵政事業に関連しても感じることはあります。
「民間企業」である佐川急便やクロネコヤマトの配達員は、トラックから降りると走って配達先へ向かいます。そして、階段なども小走りに駆け上がり、汗だくになって配達している姿をよく見かけます。それもそのはずで、配達した荷物の数で報酬も変わりますから、短時間で一個でも多くの荷物を運ぼうと各ドライバーも必死です。
一方「官」である郵便局の配達員が走っているのは見たことがありません。(たまたま、私だけ見たことがないだけで、皆走っているのでしょうか?)私の知人は、かつて郵便局に勤めていましたので、郵便局の非合理性をよく聞かされました。郵便配達員の給与は固定ですから、効率が良かろうと悪かろうと同じだったそうです。むしろ、効率を悪くした方が(わざとノンビリ配達して残業した方が)残業代も請求できるから好ましい、といった雰囲気だったそうです。その知人は十年以上前に郵便局を辞めているので、今はどうなっているかは知りませんが、非効率性がすべて排除されているとは考えにくいものです。今、日本では、この郵政民営化の是非が来る衆議院議員選挙の大きな争点になっていますが、民営化されるとどうなるのかなぁ、などと考えたときに、こうした中国での経験が思い浮かび、民営化後は、走って配達する郵便局員の姿が見られるのかなぁ、などと考えてしまいました。
郵便局を含めて、「公務員やそれに準ずる人の中には、仕事らしい仕事もしないで給料をもらっている人がたくさんいる」と公務員の友人が言います。彼によれば、税金の無駄遣いとしか思えない公務員はたくさんおり、真面目に一生懸命働いている一部の心ある公務員にとっては、そういう人と同類にみなされてしまい「いい迷惑だ」と憤慨しておりました。
今度の選挙で与党が勝利し、郵政が民営化されれば、それを足がかりとして、公務員改革も進むことでしょう。つまり、「小さな政府」実現に向けた取り組みが本格化するものと思われます。与党は、人件費(つまり公務員の数とその給料)を削減すると言っていますので、郵便局員ならずとも公務員にとっては、聞き捨てならない話です。それでも、公務員である先の友人は、こうした与党が掲げている「公務員の削減」という政策には賛成だとも申していました。税金の無駄ともいえる不要な公務員には、とっとと辞めさせるべきだ、と。ただ、実際に無駄な人員が削減されるのかどうかの確証はないのです。優秀な人員が辞めさせられて、使えないが要領だけはいい(政治力がある)、といった人たちだけが公務員に留まる、なんてことになったら、公務員が減っても、喜べません。こんな事態にはだけはなってほしくないものです。
ともあれ、これだけ国家財政が危機的状況にありますので、心ある公務員なら、このままでいいなどとは考えてはいないはずです。その意味でも、公務員や準公務員とその関係者がどういった投票をおこなうのかが注目されます。言われるような「民」対「官」などという単純な構図ではなく、「国益を考える」のか、それとも「既得権益を守りたいのか」といった構図になるのではないでしょうか。私は著作の「はじめに」に次のように書きました。
賢明な庶民それぞれが、政治を監視し、「経世済民」がおこなわれているかどうかを厳しく判断していくことがとても大切なのです。
政策は、庶民のフトコロを直撃します。だから、お金に関心があれば、政治にも関心を持つべきです。政治といっても、庶民にできることは限られています。投票行為だけが、自らの意思表示を行うことができる唯一の方法ですから、これを行使しないなどということは絶対に間違っています。有権者であれば、必ず投票にいくべきです。有権者の選択が今後の日本の行末を決定づけるのですから。大事なのは、自分の良識で候補者・政党を判断し、清き一票を投ずることです。もちろん「投票したいと思わせるような候補者がいない」とか「支持したい政党がない」という場合もあるでしょう。それなら、白票を投じるという意思表示もできるはずです。誰に(どこに)投票する、しない、はともかく、投票所に行くべきです。有権者としての責務である選挙に参加せずに、文句だけを垂れ流している人が一番無責任であり、結果として、悪徳政治家をのさばらせていることにも通じるのです。
家計革命の発想では、賢明な庶民は、心して政治を監視する必要があると思っています。その意味でも、有権者として自分の意思を投票で表明するのは、絶対条件です。選挙結果がどうあれ、国家財政を考えれば、あらゆる面で国民負担が増えることだけは確実です。だからといって「国民負担を減らします」「増税を阻止します」などと耳ざわりのいいことだけを主張して、財源や財政をどうするのかを提示しないような無責任な候補者や政党には騙されないことです。しっかりと、各政党・候補者が訴えていることを吟味し、賢明な投票を心がけ、健全な社会構築のための権利を行使して欲しいものです。
とは言っても、国民を食い物にする悪徳政治家はそう簡単には減りません。だからこそ、政治がどうなろうと、経済がどうなろうと、自分の財産をしっかり守っていく知識と智慧を培っていく必要があります。きちんと政治を監視し、投票する、その反面、政策や景気に振り回されずに、自分の身を守る、それが家計革命の発想のポイントです。
(2005年9月1日)
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