グローカルコラム 78

理想で飯を食っていくには


先日、3年契約の事務所の賃貸契約を更新しました。つまり、起業して3年が経過したわけです。(実際の創立は8月ですが、事務所を借りて業務を開始したのが10月です)その間に、二人の子供を授かりましたが、なんとか生活が成り立っていますので、不満はありません。

ホームページにて自分の主張を公開していますと、批判的なメールを頂戴する場合もあります。考え方の違いによる批判は当然あると思いますし、そういったメールに対しても、誠実に対応させていただいております。ですが、稀に、感情的な批判メールがあります。これには困ってしまいます。例えば「お前の言っていることは理想論だ!」「現実世界ではお前のようなきれい事で飯を食ってはいかれないんだよ!」といった内容のメールです。現実社会の厳しさの中で必死に生きておられるのは理解できますし、私自身も日々の現実生活が戦いであるとおもっています。それなのに、私の主張を「理想論だ!きれい事だ!」といって感情的に批判されてしまうのは悲しい限りです。確かに、私の主張には理想主義的なところがあるのは認めますが、常に「どうしたら、その理想に近づけるのか」というアプローチに重きを置いているつもりですので、頭ごなしに「そんなの無理だ!」と言われるのが一番辛いのです。

思えば、独立を決意し、勤めていた会社のオーナー社長に自分の理想とする仕事について語り、辞意を表明したときに、言われたのも「理想は分かるが、きれい事で飯を食ってはいけない。そんな甘い世の中じゃない。現実的になれ!」というものでした。親しい友人からも、「庶民から取れるアドバイス料などタカが知れてるだろう。儲かっている企業や裕福層をターゲットの顧客にしないと食って行けないぞ」と忠告をうけました。確かに、庶民から高い報酬など受け取ることはできませんから、その友人の言うことはもっともでした。でも、そこで私の課題は明確になりました。「それならどうやって庶民を中心にしたアドバイス業で食っていくか」「そのためには、どうしたらいいか」ということです。つまり、「いかにして、きれい事で飯を食い、理想を貫くか」ということです。以来、試行錯誤を重ねて何とか3年はやってこれました。これからいつまでやっていけるかは、正直分かりませんが、自分の中ではやっていける自信は出てきました。「根拠は?」と聞かれると何もないのですが、この3年間の奮闘(試行錯誤)で培ったふつふつと湧き出でる内面からの自信です。さらには、「本当に駄目なときが来たら、潔く方向転換すればいい、家族が飢え死にすることはないだろう」、という開き直りです。あるいは、「理想やきれい事でだけは、飯は食えない」と人が言うなら、「自分が理想で飯を食うモデルケースになってやろう」という意地というか執念です。「志さえあれば方法はいくらでもある」とは孫文の言葉ですが、「本当に方法はいくらでもあるなぁ」というのが、3年間やってきた実感です。

例えば、音楽が好きで、「音楽家になりたい、音楽で食べていきたい」という子供がいたとします。「そんなの無理だ。お前にはそんな才能はない!」と切り捨ててしまうのは簡単ですが、私の視点は「どうやったら可能となるか」というものです。確かに、CDデビューして稼げる音楽家になるのは大変なことです。ただし、売れるCDを出す人だけが音楽家ではありません。スタジオミュージシャン、作曲家、コンサートなどの裏方、楽器などの製造職人、町のピアノ教室の先生、どれも音楽家であり、収入があれば音楽で飯を食う人たちです。そこで問題なのが、「志」です。「何のために音楽家になるのか」という根本問題です。「音楽を手段にして、金儲けをしたり、ちやほやされたいだけなのか」それとも「音楽を愛し、音楽の素晴らしさを人に教えたり、音楽を通して人に感動を与えるような仕事に携わりたい」という思いなのか。孫文の言葉は、本当に考えさせられます。志が明確で、それを仕事にできる人は本当の幸せ者です。

 

よろこびをもって仕事をし、なしとげた仕事をよろこべる者は幸福である(ゲーテ)

 

その意味では、私は幸せ者だと思っています。

 

自分の仕事を見いだした人は幸いである。それ以外の幸福は求めぬがよい(カーライル)

 

とは言うものの、仕事以外の幸福も求めてしまう欲張り者ではありますが。

                              (2005年10月12日)



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